FC2ブログ

大正10年の山梨日日新聞「妖怪研究」③ 

研究室のある甲府も昨日までは連日30度越えの暑い日が続いていました。
今日は雨が降ったり止んだりで、多少は過ごしやすくなっています。

今朝の南アルプスの様子はコチラ↓ 山裾しか見えません。どんより。
20180704風景

さて、「妖怪研究」の事例紹介の2回目です。
今回は、「妖怪研究」の中で数少ない、現代的な(水木しげる先生的な?)語感としての「妖怪」が登場する、大正10年11月20日付け「妖怪研究(十九)樹木の精? =斧を下せね相生の松」です。
この話は、甲州の金山で有名な黒川山の鶏冠神社のご神体(神器)をめぐる祟り話である「神器の祟り? =手にしたもの皆病む」と同じ回に2本立て記事のひとつとして掲載されていました。

次のような内容です。

 東山梨郡八幡村(現:山梨市)のF氏の話。
 同郡平等村(ひらしなむら。現:山梨市)に龍石山永昌院という古刹があります。その持山は松の古木が鬱々として、天にも届かぬばかりの深い森でしたが、昨年(大正9年)8月にこれらの木を売り払うことになり、大勢の木こりが入って、おりからの強い日差しの下、斧をふるって松の古木を切り倒してゆきました。
 ところが、大澤区(所在未確定-2018/07/14追記:万力金櫻神社の山手、山梨市落合に大沢という小字名がありました。現在は果樹園になっています)に一本の相生の松がありました。昔から相生松は切ると祟りがあるというので、この松は残しておくしかないと、木こりたちも手を出すのを躊躇していました。その中である木こりがじっくりとこの松を眺めていましたが、こんな良材はなかなか得られるものではないと、人の止めるのも聞かず、斧を入れようとしました。その瞬間、全山を揺るがさんばかり鳴動が起こって、にわかに沸き起こった黒雲の中に怪しい大入道の姿が見えたので、木こりは驚いて一目散に逃げ帰ったそうです。それから大病をして、長い間寝ていたものの、かろうじて全快したとのことです。
 大澤区ははげ山となりましたが、この相生の松だけは今も残って、入道松と呼ばれているそうです。

記事出典:湯本豪一『大正期怪異妖怪記事資料集成(上)』(国書刊行会、2014)1263頁



舞台となった龍石山永昌院 は、山梨市矢坪に実在する、曹洞宗のお寺です。もともとは真言宗のお寺で金峰山を中心とする山梨の修験に関係したとも言われていますが、15世紀には武田氏の庇護を受け、曹洞宗に改宗し、栄えたとされています。
お寺のURLはコチラ→ http://www.eishouin.jp/



この永昌院の持山の持山に相生の松が生えていたとされています。
ところで、相生の松とは、2本の松が1本の根から生えているように見える松などをいい、夫婦の契りをあらわしたり、霊妙さをもったものと考えられてきました。

今回市町村誌などを調べてみましたが、その範囲では記事のようないわれを持った永昌院の松の話は見つけられませんでした。

なお、永昌院の江戸時代の寺領※は、落合村(現:山梨市落合)内と松本村(現:笛吹市松本)内にあったとされています。これらの寺領のどこかにあったものとして、お話は進んでゆきます。ただし、寺社領は、明治初めの上知令によって、境内地を除き、国有化されていましたが、明治32(1899年)の国有土地森林原野下戻法により所有または分収が認められることなっており、今回の話も、持山の伐採が事実であれば、永昌院が同法により下げ戻された権利に基づいて木材の伐採をしたものと推測されます(未調査)。

上記の通り霊妙な松であるがゆえに、切ることをためらう木こり(原文:杣)たちをしり目に、斧を入れようとすると、大入道が出現します。

大入道は、ポピュラーな怪異で、北は東北から、南は九州まで出現しています。
たとえば、水木しげる『図説 日本妖怪大全』(講談社、1994)90頁 は、仙台藩で黒雲の中から現れた大入道を伊達政宗が退治したところ大カワウソだったという話が出ていまし、日文研「妖怪・怪異伝承データベース」http://www.nichibun.ac.jp/youkaidb/)でも60件以上の出てきました。それらの事例をみると、その多くは、大入道の正体について、狐狸やイタチ、カワウソなどの小動物が化けた物としています。

この話では、出現した大入道の正体も分かりませんし、また、相生の松との関係もいまひとつ判然としません。
ただし、怪異とはこのようなものだともいえます。

関連記事
スポンサーサイト

Posted on 2018/07/04 Wed. 14:47 [edit]

CM: 2
TB: --

top △

« 甲府ねこ(重複御免)-通番37号  |  大正10年の山梨日日新聞「妖怪研究」② »

コメント

雷獣

こんにちは~。

カミナリ雲から出てくるといえば雷獣というのがいるね。この雷獣が大きなイタチのようなイメージで描かれているよ。

松の木との関連は分かりませんが。

山梨は雨大丈夫?

ぢょん でんばあ #- | URL | 2018/07/06 08:35 * edit *

Re: 雷獣

こちらこそ~

雷の記述がないので、雷獣じゃないんでしょうね。
こちらはちょっと山に入ると、狐もいるからね(目撃しました)。

いなけん




> こんにちは~。
>
> カミナリ雲から出てくるといえば雷獣というのがいるね。この雷獣が大きなイタチのようなイメージで描かれているよ。
>
> 松の木との関連は分かりませんが。
>
> 山梨は雨大丈夫?

いなけん #- | URL | 2018/07/06 22:27 * edit *

top △

コメントの投稿

Secret

top △

2019-01
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31