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家族法メモ-犬神佐兵衛翁の遺言(1) 

庵主の勤める大学では本日が卒業式です。
快晴になり、貸衣装の卒業生にとっては天候に良き日となりました。

今朝の南アルプスの様子はコチラ↓ 一昨日の雪が残っているようです。
20180323風景

さて、久しぶりに法律の話題をアップしておきたいと思います。

横溝正史 の代表作のひとつに「 犬神家の一族 」があります。この作品は、長野県那須市(もちろん架空の場所です。諏訪がモデルといわれています)において日本有数の製糸会社を一代で築いた犬神佐兵衛翁が遺した遺言をきっかけに起きた惨劇と名探偵金田一耕助の事件解決までの活躍を描いたものであり、この遺言が重要な役割を果たしています。

少し前、家族法の授業のためにいくつかの教科書をながめていたところ、犬神家の遺言に関してコメントをしている家族法先生がいらっしゃいました(内容は次回以降にとりあげます)。近頃の学生は「犬神家の一族」といっても知らない危険性があるので、授業で言及はしませんでしたが、この機会には家族法上のいくつかの論点をまとめておきたいとおもいます。だだし、研究室の庵主は家族法の専門家ではないので、教科書レベルの整理になるとおもいます。

まず、最初に犬神家の遺言の内容を抜き出しておきましょう。なお、以下作品からの引用は横溝正史『犬神家の一族』(KADOKAWA、改版、1998)を底本にします。

遺言状の条項(65‐70頁)

ひとつ  ……犬神家の全財産、ならびに全事業の相続権を意味する、犬神家の三種の家宝、斧、琴、菊はつぎの条件のもとに野々宮珠世に譲られるものとする。

ひとつ  ……ただし野々宮珠世はその配偶者を、犬神佐兵衛の三人の孫、佐清、佐武、佐智の中より選ばざるべからず。その選択は野々宮珠世の自由なるも、もし、珠世にして三人のうちの何人とも結婚することを肯ぜず、他に配偶者を選ぶ場合は、珠世は斧、琴、菊の相続権を喪失するものとす。……

ひとつ  ……野々宮珠世はこの遺言状が公表された日より数えて、三か月以内に、佐清、佐武、佐智の三人のうちより、配偶者を選ばざるべからず。もし、その際、珠世の選びし相手にして、その結婚を拒否する場合には、そのものは犬神家の相続に関する、あらゆる権利を放棄せしものと認む。したがって、三人が三人とも、珠世との結婚を希望せざる場合、あるいは三人が三人とも、死亡せる場合においては、珠世は第二項の義務より解放され、何人と結婚するも自由とす。

ひとつ  ……もし、野々宮珠世にして、斧、琴、菊の相続権を失うか、あるいはまたこの遺言状公表以前、もしくは、この遺言状が公表されてより、三か月以内に死亡せる場合には、犬神家の全事業は、佐清によって相続され、佐武、佐智のふたりは、現在かれらの父があるポストによって、佐清の事業経営を補佐するものとす。しかして、犬神家の全財産は、犬神奉公会によって、公平に五等分され、その五分の一ずつを、佐清、佐武、佐智にあたえ、残りの五分の二を青沼菊乃の一子青沼静馬にあたえるものとする。ただし、その際分与をうけたるものは、各自の分与額の二十パーセントずつを、犬神奉公会に寄付せざるべからず。

ひとつ  ……犬神奉公会は、この遺言状が公表されてより、三か月以内に全力をあげて、青沼静馬の行方の捜索発見せざるべからず。しかして、その期間内にその消息がつかみえざる場合か、あるいはかれの死亡が確認された場合には、かれの受くべき全額を犬神奉公会に寄付するものとす。ただし、青沼静馬が、内地において発見されざる場合においても、かれが外地のいずれかにおいて、生存せる可能性がある場合には、この遺言状が公表されたる日より数えて向こう三か年は、その額を犬神奉公会において保管し、その期間内に静馬が期間せる際は、かれの受くべき分をかれに与え、帰還せざる場合においては、それを犬神奉公会におさむるものとする。

ひとつ  ……野々宮珠世が斧琴菊の相続権を失うか、あるいはこの遺言状の公表以前、もしくは公表されて三か月以内に死亡せる場合において、佐清、佐武、佐智の三人のうちに不幸ある場合はつぎのごとくなす。 その一、佐清の死亡せる場合。犬神家の全事業は協同者として佐武、佐智に譲らる。佐武、佐智は同等の権力をもち、一致協力して犬神家の事業を守り育てざるべからず。ただし、佐清の受くべき遺産の分与額は、青沼静馬にいくものとする。 その二、佐武、佐智のうち一人死亡せる場合。その分与額同じく青沼静馬にいくものとす。以下すべてそれに準じ、三人のうち何人が死亡せる場合においても、その分与額は必ず青沼静馬にゆくものとなし、それらの額のすべては、静馬の生存如何により前項のごとく処理す。しかして佐清、佐武、佐智の三人とも死亡せる場合に於ては、犬神家の全事業、全財産はすべて青沼静馬の享受することとなり、斧、琴、菊の三種の家宝は、かれにおくられるものとなす。


作品中では、「犬神佐兵衛翁の遺言状は、実際はもっと長いのである」とされ、「そこには野々村珠世をはじめとして、遺言状の中に名前があげられる、佐清、佐武、佐智の三人のいとこ、ならびに青沼静馬なる人物と、この五人の人間の生と死との組み合わせが、あらゆる場合の可能性を追究していく、一種のパズルのようなものであった」とされています(70頁)。

登場人物は遺言者である犬神佐兵衛翁を含めて7人ですね。作品を読まれたことのない方、たびたび制作された映画等をご覧になったことのない方のために、人物関係を明らかにする必要があるのですが、面倒なので、ウィキペディアの記事「犬神家の一族」を参考にしてください。
URL  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8A%AC%E7%A5%9E%E5%AE%B6%E3%81%AE%E4%B8%80%E6%97%8F

<つづく>

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Posted on 2018/03/23 Fri. 10:52 [edit]

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