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田中貢太郎の採集奇談 

今日で後期の業務は、前期・後期の個別入試と関連業務を除いて、山を越えました。

今朝の南アルプスの様子はコチラ↓ 雲がかかっていました。
20180216

たまたま読んでいた 田中貢太郎『日本怪談実話<全>』 (河出書房新社、2017)272-273頁 に、甲府の話が出ていたので、庵主の備忘を兼ねて紹介させていただきます。なお、筆者の田中貢太郎とは、大正期に活躍した作家で、最近では文芸の一分野にもなっている実話系怪談も書いています。この本の原著も、1937年に出版された同氏の 『新怪談集(実話篇)』(改造社) をもとにしているとのことです。

では、さっそく・・・

「鉄道線路を走る少年」
 大正十一年七月二十二日の事であった。甲府市外相川村*の相沢栄吉の長男富雄は、その時十一で相川小学校*の三年生であったが、その日の午前中、太郎と云う友達と二人で連隊*付近の山へ花摘みに往ったが、午過ぎになって太郎は帰って来たが、富雄は帰って来なかった。
 富雄の家では心配して、太郎に訊いてみると、山へ往って遊んでいると、睡くなってぼうっとしているうちに、富雄がいなくなったので、独りで帰って来たと云った。
 相沢家では驚いて、村の人を頼んで山の中を捜していると、六時比になって、長野県西筑摩郡日義村*から、富雄君を保護しているから伴れに来いと云う電報が来た。相川村から日義村まで約三十里あるので、相沢家では不審に思ったが、富雄がいると云うので早速父親の栄吉が迎えに往った。
 富雄を保護してくれていた者は、元日義村の助役であった清沢と云う人であったが、その話によると、午後六時比、同村宮越付近の鉄道線路*を、阿父さん阿父さんと云って泣きながら、藪原*の方へ走って往く少年があるので、呼び止めて訊いてみると、相川村の者だと云うし、穿いている麻裏の緒に、相沢富雄と書いてあるので、ともかくも日義村の小学校長の許へ伴れて往って、学校の眺望台に立たせて、どっちの方角から来たと云えば、山の方へ指をさして、あの山からだと云った。学校はと問えば、師範学校附属小学校*、校長はと問えば、浜幸次郎*と答えた後で、家はこの近所だから線路を伝って往けば、帰れるだろうと云って、そのまま駆け出そうとするので、引き留めておいて電報を打ったとの事であったが、それにしても一銭の金も持っていないので、汽車には乗れないし、元より子供の足で三十里を半日で歩けるものでない。それには現代の常識では判らない何事かがあったように思われる。


*相川村:1937年に甲府市と合併。古府中町、上・下の積翠寺町、塚原町などの付近。
*相川小学校:甲府市古府中町にある甲府市立相川小学校の前身か?


*連隊:甲府にあった甲府四十九連隊のこと。現在の国立甲府病院、山梨大学付属小学校あたりに駐屯地があった。
*日義村:現在の木曽郡木曽町の一部。
*宮越付近の鉄道線路:中央西線のことと思われる。現在も宮ノ越駅という駅がある。


*藪原:木曽郡木祖村に薮原駅がある。宮ノ越駅と奈良井駅の間。宮ノ越駅からみると一応は甲府方面
*師範学校附属小学校:大正11年なら山梨県師範学校の附属小学校(現在の山梨大学付属小学校)。本文の最初で相川小学校といっていたことと矛盾。
*浜幸次郎:1915年から1919年まで山梨県師範学校長を務めていたようだが、詳細要調査。

田中貢太郎

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おまけ 宮ノ越駅付近の集落方面(2018年2月21日に列車内から撮影)
20180221宮ノ越


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Posted on 2018/02/16 Fri. 23:45 [edit]

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コメント

怪談

おはよー。

面白そうな本だね。探して読んでみよう。

ちょっと大胆な誤植?誤変換?があるよ。やっぱり疲れているんだね。

しばらくゆっくりしてください。

ぢょん でんばあ #- | URL | 2018/02/17 07:58 * edit *

Re: 怪談


では、月曜日にでも最寄りの駅にあるモールへもっていって参ぜようかな?

原文もいろいろあったんだよ。

> おはよー。
>
> 面白そうな本だね。探して読んでみよう。
>
> ちょっと大胆な誤植?誤変換?があるよ。やっぱり疲れているんだね。
>
> しばらくゆっくりしてください。

いなけん #- | URL | 2018/02/17 20:35 * edit *

メールしたよ

見てね

ぢょん でんばあ #- | URL | 2018/02/19 08:45 * edit *

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