甲信御岳参詣道の復活⑤-オオカミ伝承(その3) 

研究室のある甲府もそろそろジャケットが必要かなと感じる季節になりました。
今日の大学では後期ガイダンスが開かれたので、出席してきました。いよいよ後期が始まります。

けさの南アルプスの様子はコチラ↓ 雲がかかってしまいました。
20170922風景

今日もオオカミ伝承の抜き書きをメモっておきたいと思います。北口(長野県川上村)の続きです。

金峰山北口方面の続・オオカミ伝承
浅川欽一『信濃川上物語』(国土地理協会、1982)
松谷みよ子『現代民話考[10]狼・山犬・猫』(ちくま文庫、2004)より引用(孫引き)

[北3‐1]犬は空を向いてワンワン鳴く、山犬は地へついてオーってうなるそうですがねえ。オーっとやられると、どんな獣でも震え込んじまう。馬なんかだって、全然動けなくなっちまうってねえ。土に向かってオーってやられると、地響きするってねえ。昔、諏訪の殿様が死んで埋葬したらばねえ、山犬が墓所をあばいたってねえ。しかもそれが白い毛のオオカミだったって。それでこっちまでお触れが出て、「もしその山犬を仕留めた者には、ほうびをやる」ってさあ、わしの隠居がそんなこといいやしたよ。山犬ってものは、灰色だってねえ、赤いもんでもなし、黒いもんでもなしにねえ。27


[北3‐2]わしのおやじは、今生きておれば、百越しているけどねえ、山犬には三回行き合ったというですよ。一回はねえ、夜明けに、馬に乗って、草刈りに行ったところが、馬がふうふうって、ちっとも動かねえって、立ってて。それで怖いような格好するから、向こう見たら、山犬がこっちへ向いているって。それでもって、びっくりしちゃってねえ、身震いするほどおっかなくなったけれど、帰るわけにもいかねえから、馬から降りて、それで馬の手綱持って、そうして、馬ひっつってねえ、それで後とび(走り)抜けて行ったら、山犬は振り返って見ながら、こなかったといいやしたねえ。36


[北3‐3]これも、わしの隠居の話だがねえ、このときゃ一番怖かったっていたねえ。ここでは、エエ(結い)っつことやるわけです。今夜は君の家で、あしたの晩はおらの家っつように決めて、共同で稲刈りってのやるわけです。それで友だちと約束して、夕飯食べて行ったけど、友だちはまだこねかったってねえ。それで自分だけで刈ろうと思って、馬越坂という場所、居倉と境のこっちの。そこへ行って稲刈ってたところが、なんだかいやな音がしたってねえ。それで、見たら、道へねえ、山犬がきていて、バタバタッと足がたぶっちゃ(足ぶみしては)ねえ、尾を土へたたきつけちゃいるって。それでもうびっくりしちゃって、血の気もよだつような思いがしたってねえ。そうそうなりゃ稲刈るどころじゃねえ。後ろ見せちゃいけないそうだから、道へ出て石を投げたってねえ。だが、ちょっと石がとんでくるときしょぼって(尻尾を下げて)行くけれども、また向こうからやってくるから、後びっちり(後ずさり)で石を投げしな、それでやっとこねえ、中畑ほちっつとこへきたら、友だちの人が稲刈りにきてなあ。「早くこうやあ、山犬にかかられそうだから」っつわけで、二人でもって石投げてねえ、こんだ二人になって騒いだら、逃げたなんていったけどねえ。36


[北3‐4]この辺じゃこんな寒いとこだから、明治初期まで蚕を飼うに、桑を山梨県へ行っちゃ、買ってきたわけです。そうしちゃ馬に二段ぐれいつけて平沢峠を通ってくると、必ず山犬が後をつけてくるっつんです。後をつけてくるけんど、ひいている本人が転ぶか、かからんければ、山犬は人に危害を加えないっつことをうすうすみんなに聞いて知ってたから、だまって馬をひいて、テコテコきたそうです。そうしたら、スタスタ後をつけてきたけれど、かからねかったってねえ。


[北3‐5]居倉ってとこに、与平って鉄砲撃ちがいたですよ。この人、生きていれば、百五十ぐれいになるけどねえ。その人の話、聞いたけどねえ、「おれは山犬三匹撃ち殺したといったねえ。それが最後でねえ、この村にゃ山犬がいなくなったですよ。明治三十三年(一九〇〇)だっていうですよ。その最後の山犬撃ったときの話は、こんなふうにしてくれたねえ、居倉山って山があるの、その山すそにオッカグラってところがあるそうですねえ。与平って人は、そこへ行って、笛吹いたってねえ。鳥をおびき寄せる笛で、雌の笛吹くと雄がやってくる。雄の笛吹くと雌がやってくるってねえ。じいさん、そういう笛やって、タバコ吸いながら、じっとうかがっていたら、キジが舞い立ったってねえ。“おかしいなあ、おれを見ぬうちに舞い立つなんて”って、立って向こうを見たら、山犬が寝ているだって、昼寝して。そこで、散弾を実弾に込め直して、ズドーンと撃って、一発で仕留めたってねえ。(それがこの村の最後の山犬で)、「おれが最後の山犬撃ったのだ」なんて、いってたけどねえ。171


[北3‐6]去年だか、一昨年、松原の、最近亡くなった鷹野一弥君が、そんなこといいましたけどねえ、山犬の足跡があったってねえ。「いや山犬なんか、そんなもの、日本国中にいねじゃねえか」っていったら、「これが山犬の足跡だ」なんて、拓本とったの見したったがねえ。「まだわからねけど、必ず八ヶ岳に山犬がいる」なんて、いってましたがねえ。173



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Posted on 2017/09/22 Fri. 14:15 [edit]

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