民法(債権関係)改正案における個人保証人保護の拡充 

庵主の研究室のある山梨大学でも明日から講義がはじまります。
今日は、講義の準備と週末に大阪で行う研究会報告の準備のために登校しています。

今朝の研究室からの南アルプスの様子はコチラ↓ 雪が少なくなっています。
20160411風景

研究会報告では、昨年3月に国会に提出され、現在も継続審議中の民法(債権関係)改正法案における保証に関する規律と実務上の対応をとりあげる予定です。銀行からお金を借りるとき、家を借りるときなどに保証人を立てるなど、日常生活でもしばしば接することになる法律制度であり、今回の改正でも重要な点が含まれるため、研究会で取り上げる次第です。

以前市民向けの別の機会にも、個人保証人保護の拡充ということで話をさせてもらう機会もあり、普通の社会人でも関係するような場合をとりあげて考えてみたいと思います。

まず、個人が保証人となる場合の規律の全体像を整理するとつぎのようになります。
┏ 普通保証
┃ ┣ 被保証債務が事業のために負担する債務以外 【ケース①】
┃ ┗ 被保証債務が事業のために負担する債務
┃    ┣ 事業のために負担した貸金等債務が含まれない
┃    ┗ 事業のために負担した貸金等債務が含まれる 
┃       ┣経営者保証 
┃       ┗経営者保証以外(いわゆる第三者保証)
┗ 根保証
   ┣ 被保証債務に事業のために負担とする債務が含まれない
   ┃ ┣ 貸金等債務が含まれない【ケース②】
   ┃ ┗ 貸金等債務が含まれる  
   ┗ 被保証債務に事業のために負担する債務が含まれる
     ┣ 貸金等債務が含まれない
     ┣ 貸金等債務は含まれるが、事業のために負担する貸金等債務が含まれない
     ┗ 事業のために貸金等債務が含まれる
       ┣ 経営者保証【ケース③】
       ┗ 経営者保証以外(いわゆる第三者保証)【ケース④】

複雑ですね。
まず、用語の解説です。「普通保証」と「根保証(ねほしょう)」ですが、前者は単発の借り入れや商品購入代金の支払いを保証するような場合をいい、後者は一定の範囲に属する不特定の債務(たとえば、毎月購入する商品代金を担保する、事業資金を毎月必要額借り入れるなど。クレジットカードもそうですね)の支払いを保証する場合をいいます。

具体的な例で考えてみましょう。息子が借り入れた居住用住宅ローンの保証はケース①に該当し、今回の民法改正案による変更はありません。これに対して、息子がアパートを借りた場合にする家賃等の保証はケース②に該当し、改正法案では保証の限度額(極度額といいます)を書面で決めないと保証そのものが無効となります(改正法案465条の2)。

よほどの大企業でもない限り、会社の経営者は会社の銀行借入れ(貸金等)や仕入れ代金について保証することがあります。このような場合はケース③に該当します。
ケース③では、上記の極度額を定めるほか、確定期日といって保証対象となる債務の発生時期が最長5年に制限されます。これらの点は現行法でも同様です。これらに加え、保証人になってくれと依頼する者・会社(主たる債務者=主債務者といいます)は、その財産状況・収支の状況、被保証債務以外の債務の状況などに関する情報を依頼を受けた者に提供しなければなりません。この情報提供がなかったり、あるいは事実と異なる情報を提供されたことにより、誤認が生じた場合は、保証を取り消すことができると明記されました(改正法案法案465条の10)。
問題は改正法案における「経営者」とは誰かになります。この点、会社の取締役過半数の株式を有する大株主、共同事業を行う者、それにこのような会社が行う事業に現に従事している配偶者とされています(改正法案465条の9参照)。

知人の保証人になって巨額の負債を負ってしまい、家族の人生が無茶苦茶になった的な話は、どうでしょうか。
このような事態はケース④で生じます。すなわち、事業資金の銀行借り入れなど巨額になりがちな事業上の債務について、友誼心などから保証をしてしまった場合です。
ケース④では、ケース③と同様の規律のほか、保証人になろうとする者が保証人になる段階(1か月以内)に法律の専門家である公証人に対し、保証の内容や保証人として責任を負う意思を口述して、公正証書という書類を作成しないと、保証は有効に成立しないと定めました(改正法案465条の7)。

上記のように巨額の負債になり、保証人が過重な負担を負うおそれがあるような保証の場合、入り口で保証人が再度考慮することができる機会を挟ませたわけですね。
銀行をはじめ、債権者側としては業務コストは上がるでしょうが、やむを得ないものとして対応してゆくこととなるでしょう。
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Posted on 2016/04/11 Mon. 15:02 [edit]

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