姥捨てなのか?日本創生会議の提言 

研究室のある甲府は曇り模様ですが、まだ雨は降りだしていません。

研究室の窓から見える今朝の南アルプスはコチラ↓ ぼやけていますが冠雪が少なくなりました。
20150605風景

ちなみに昨日の様子はコチラ↓ 少し分かり易いかしらん。
20150604風景

5月は本務校の講義・ゼミの準備や入試作業、非常勤先の講義の準備、研究会報告の準備でバタバタしており、結局2回しか更新できませんせんでした。今月もその嫌いはあるのですが、更新できるときにしておきましょう。

さて、今朝の主要紙のうち、毎日新聞を除く3紙の一面トップ記事は、いずれも日本創生会議(座長・増田寛也元総務相)の提言でした。ちなみに見出しを引用すると、以下のとおりです。
読売新聞(13版) : 「介護難民」10年後43万人 東京圏13万人地方移住を提言
朝日新聞(13版) : 足りぬ介護「地方移住を」 10年後、東京圏の需要45%増
日経新聞(12版) : 介護施設13万人分不足 41地域へ移住提言


新聞(日経・朝日だけですが・・・)はこんな感じです↓
20150605新聞

記事の趣旨としては、東京千葉、埼玉、神奈川の1都3県(東京圏)では高齢化が急速に進み、10年後には介護施設・人材の不足により13万人分が不足するので、介護施設に余力がある26都府県41か所を例示して、高齢者の移住を促すべきであるとするものです。

日本創成会議のウェブサイト(URL : http://www.policycouncil.jp/ )を見てみると、いきなり「首都圏高齢化危機回避戦略」とのネーミングに立ち止まってしまいます。そこで立ち止まらずに、提言の中身を見てみると、首都圏の年齢動態や流入流出状況を分析した上、4つの提言をしています。その4つとは、①看護・介護職員など人材の大量投入を必要とする医療介護福祉のサービス構造の見直し、②地域医療介護体制の整備と高齢者の集住化の一体的促進、③一都三県をカバーする行政対応の確保、④東京圏の高齢者の地方への移住の促進、です。

メディアが飛びついたのは提言の4番目であることが分かりますね。

しかも、微妙なのは、提言本文の見出しでは「東京圏の高齢者が希望に沿って地方へ移住できるようにする」とし、各人の希望を打ち出していますが、メディアが参考にしたと推測される概要版ではこの点は強調されていません。その理由としては、具体策として、「企業の勤務地選択制度の普及や地方移住(二地域居住を含む)を視野に置いた老後生活の設計を支援する取り組み」が重要であるとし、制度論にとどまっています。

制度的支援も確かに重要なのですが、欠落しているのではないかと危惧する点があります。
第一に、なぜ首都圏に高齢者人口が滞留しているのか、という問題です。これは政官民が作り上げてきた、日本の産業構造にも切り込んでいかないと解決策は見出せないでしょう。
第二に、高齢者の希望は千差万別であり、マスの議論にはなじまない話だと思います。

これらの点からは、形式化された「希望」にしたがって地方に追いやられる人が出るおそれがあり、新聞上である論者が指摘するように現代の姥捨て山に繋がりかねないとの懸念が出ても仕方がないと思われます。日本創成会議のメンバーのような功なり、名を上げた人と違い、経済的に劣る者は、労働力としての価値がなくなったら、我らが東京から出て行けと言っているのではないかと勘ぐったりしていまいそうです。

東京の本音が垣間見える貴重な提言です。
これを批判するだけでなく、各地域としては一生を通じて過ごせるような、教育・雇用・医療などの振興を考えないといけないのでしょう。果たして研究室のある地域はどうでしょうか。

土曜日ですが所用があって研究室に登校しています。
以前にも書いたことがあると思うので、追記欄にメモ的に記載しておきます。

政策提言のような場合、個人の視点に下りることがなく、単に「13万人」とか「43万人」とか数字ばかりが出てきます。仕方ないことなのかもしれませんが、人をコストと考えるものに共通しますね。

庵主がメーカーに勤務した時に最初にカルチャーショックは、「工数」という概念を中心とする思考方法でした。ある仕事をするためにはどれだけの人的コストがかかるかを計算するための単位です。この「工数」概念で、個々の労働者の個性は完全に消されています。

昨今の安保法制にも関連しますが、軍隊における兵士の「損耗率」という概念もなかなか冷酷な印象です。

法学の世界では、このような個性を払しょくした数字を利用することは多くないと思います。そのため、法学は「科学」なのかという疑問を呈されることもあります。ただし、より人間に近しい学問であることは間違いないでしょう。



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Posted on 2015/06/05 Fri. 11:01 [edit]

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