甲府のノラ-猫編25号 

ちっと腰が引けてしまったニャ。

ノラ25号


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Posted on 2016/06/15 Wed. 17:55 [edit]

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甲府地裁平成民事裁判例の紹介(7)-平成24年10月16日判決 

6月に入り研究室のある甲府もいよいよ夏の気配となってきました。

今日の研究室の窓からの南アルプスはコチラ↓
20160602風景

久しく更新していなかったですが、授業の準備やらにおわれていました。

 さて今回は、甲府市内で百貨店(といっても、甲府市内の百貨店は岡島百貨店山交百貨店店舗しかありません。)で営業する被告Yと百貨店の建物をYらと共有し、その持分をYに賃借している原告X1~X3との賃料の支払いをめぐる裁判を紹介したいと思います。

【事案の概要】
 被告Yは昭和のはじめから甲府市内で百貨店を営業していたところ、昭和63年(1988年)に原告X1らを含む地権者と共同で新館を建設した。新館建築にあたって、原告X1らは、Yから保証金名目で受領した建設協力金計7億3900万円と銀行からの借入金計7億2500万円を建設費に充てていた。原告X1らは、Yから受け取る賃料をもって、上記建設協力金と銀行からの借入金を返済する予定とされていた。
 X1らとYは、本件新館の完成と同時期に、原告X1の建物共有持分の賃貸借契約を締結し、Yに対し引き渡された。X1らとYとの当初の賃貸借契約では、賃料は月額1208万円とされていたが、その後のバブル崩壊や日本経済の低迷により、数次にわたって、賃料の引き下げ合意がなされ、平成17年1月には平成16年11月から平成17年10月までの賃料は月額871万円となっていた。しかし、その後、Yの経営状況が悪化したことを受け、YはX1らに対し、平成21年1月には更なる減額請求をし、同年2月には賃料減額を求める調停の申立てを行っている(調停の帰結は不詳)。
 一方、X1らは銀行からの上記借入金について、平成13年頃からその返済が滞るようになってきたところ、平成22年4月頃には保証人となっていたYに対する請求がなされたこともあったため、X1らに弁済するよう複数回催告していた。、しかしながら、X3の借入金の一部について、平成23年1月21日にYが代位弁済することとなった。また、賃貸借契約上X1らが負担すべき公租公課についても、代理納付者であるYへの支払いがなされず、Yが立て替えた上、支払う賃料と差引計算がなされており、X1らはこれに異議をとなえることはなかった。
 このような状況の下、Yは平成23年1月24日または25日に到達した内容証明郵便によるX1らに対し契約解除の意思表示を行ない、また、賃料の支払いを止めたため、X1らが平成23年2月以降の賃料の支払いをYに求めた事案である。
 なお、争点としては、請求の特定性、賃貸借契約の解除理由の存否と解除の可否、調停申立てによる賃料減額請求の存否、本件建物の適切な賃料額はいくらか、保証金との相殺の可否があげられている。
【判  旨】
 一部認容、一部棄却
 裁判所は、賃貸借契約の解除の主張に対し、賃貸借契約と建設協力金および建設資金に関する約定とは、Yが主張するような不可分一体のものではなく、後者約定がX1らの義務になっていたとはいえないので、仮に後者約定に違反があったとしても、賃貸借契約は解除できないとした(解除を前提とする相殺も否定)。
 賃貸借契約が存続するとした上で、減額請求のあった平成21年1月を基準として、経済情勢や山梨県の地価動向をみると、最終合意額である871万円は不相当な額になっているとした。そして、適正な賃料額については、原告提出した鑑定を証拠として採用し、月額804円とした。この鑑定では、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法を採用しており、それぞれをウエイト付けしたものである。この点について、裁判所は、「本件賃貸借契約における相当賃料額を判断するに当たっては,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであるところ,前記のとおり,J鑑定は,価格時点を平成21年2月1日として継続月額賃料を,差額配分法,利回り法,スライド法及び賃貸事例比較法の各手法に基づいて試算賃料を算出し,各手法の特徴等を考慮して月額支払賃料を算出しており,これは,継続賃料の算定において行われる一般的な不動産鑑定評価の手法にのっとったものといえる。そして,その算定過程において,本件建物が百貨店営業に供されている大規模不動産であることなどの特殊事情についても十分に考慮の上,各手法の本件建物への適用可能性やその限界も踏まえてそれぞれに比重を付けるなどして組み合わせて算定されており,その算定過程及び考慮要素等に特段不合理な点は認められない」とした。この適正賃料の限りで請求は理由があるとしたものである。
【紹  介】
1.裁判所ウエッブサイトに掲載された裁判例で、そこでは次のように事例紹介がされています。
  「被告と共に建物を共有し,被告の百貨店営業に供する目的で当該建物の共有持分を被告に賃貸した原告らが,平成23年2月以降の賃料が未払であるとしてその支払を求めた賃料請求訴訟において,賃料減額請求の抗弁を容れて減額後の賃料支払を命じた事案。http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=82754
2.Yは契約解除を主張しながら、現在に至るまで営業を続けています。解除できなかったから仕方なく、という訳ではなさそうです。元々は賃料減額に関するハード・ネゴの交渉材料として解除の主張がなされただけかもしれません。でも訴訟になっちゃったんですね。少しだけ減額が認められたので、訴訟経済的にはどうだったのでしょう。
3.法律屋の視点からは、適正な賃借料の算定方法について事例を加えた裁判例、その意味でいわゆる「事例判決」といってもよいかもしれません。また、複数の契約間の関連性があいまいになるような行為(今回は賃貸借契約にX1らの賃貸借期間中の損益計算書・資金繰り表が添付)は現に避けるべきだという教訓を与えた事例でしょう。
4.地元ネタ的な興味でいうと、甲府市内の地価の激しい下落が裁判所の事実認定から確認できます。
 ①甲府市商業地の地価(山梨県地価調査)は、平成元年を100とすると、平成21年には22.0に下落
 ②公示価格は、平成15年時点で1㎡あたり25万6千円であったものが、平成21年時点で12万6千円に下落

Posted on 2016/06/03 Fri. 15:42 [edit]

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