古本の署名が気になって 

今年もあと1か月余りとなり、途中になっている調べものをバタバタとしていると、ついつい更新が疎かになってしまいました。

さて、先月神保町で開催された「第56回 東京名物神田古本まつり」で研究室の庵主が購入してきた本について備忘禄的に記事にしておきましょう。露店でたまたま目についた、石田文次郎先生の『債権総論講義』と『債権各論講義』(いずれも弘文堂書房・昭和12年刊行)が1冊200円だったので、衝動買いしてしまいました。

石田文次郎って誰?という方も多いと思うので、ウィキペディアから一部をそのまま引用すると、
石田 文次郎(いしだ ぶんじろう、1892年 - 1979年)は、日本の民法学者・裁判官・弁護士。法学博士(京都帝国大学)。東北帝国大学法文学部民法講座教授や、京都帝国大学法学部教授を歴任した。
という昔の偉い先生です。物権法の領域ではいまでも、引用されることがあります。

今回は、石田先生のことではなく、この本の元の持主についてです。

本のカバーと裏表紙はコチラ↓ 持主の署名がありますね。
20151126平野1

持主の署名を拡大したものがコチラ↓ 
20151126平野2

本全体の状態は良かったのですが、随所に達筆の書き込みがあり(そのために安かったのかな)、当時のメモもはさんだ状態で売られていました。そのことから、持主であった「二回生 平野大太郎」さんとは誰なのか、が庵主の最近の悩みでした。

当時石田先生は京都帝国大学で教鞭をとっておられたこと、「二回生」という書き方は関西特有のものであることから、実家に帰った折に京大法学部の卒業生名簿をみてみました。

すると、「平野大太郎」という名前がありました。
卒業生名簿によると、昭和15年(1940年)に京大法学部を卒業し、昭和の終わり頃には、八尾にお住まいになって、大阪にある薬局チェーンの代表取締役になられていたようです。太平洋戦争の前後や事業家としての足跡については、これから機会を見つけて、調べてゆきたいと思います。

法学の場合、古い本を参照することがしばしばあり、学術論文では50年前や100年前の本でも普通に引用します(理系の先生からすると信じられないそうです・・・)。たいていは、図書館や復刻本を利用するので、書き込みなどは少ないのですが、古書店を経由したものには、書き込みのある本、元の所有者の署名・記名のある本に出会うことがあります。

最近そんな本の方が好きになってきました。
スポンサーサイト

Posted on 2015/11/26 Thu. 18:07 [edit]

CM: 0
TB: --

top △

甲府地裁平成民事裁判例の紹介(5)-平成24年3月13日判決 

山梨県内の紅葉も進んできています。
研究室の庵主は、同僚の先生とそのゼミ生と一緒に南巨摩郡早川町の視察に行ってきました。

早川町の最深部にある奈良田温泉の紅葉の様子はコチラ↓ ここから先は自家用車は進入できません。
20151110奈良田
以下の記事とは関係ありません。

温泉がらみということで、今回は温泉湧出の差し止めを求めた≪甲府地判平成24・3・13(温泉湧出差止請求事件)裁判所website掲載判例≫を紹介したいと思います。

【事案の概要】
 原告・被告とも山梨県南巨摩郡にあるA温泉の温泉旅館である。A温泉には、古くから近隣住民が利用していた温泉施設があったところ、原告らは昭和20年からそれを賃借(後に購入)して旅館業を営んでいる。原告は、旅館浴槽から300メートルほど離れた場所にある自噴源泉から塩化ビニール管で導水しており、湯量・温泉温度は浴槽の吐出口のデータを記録している。
 平成17年になって、被告は山梨県から温泉掘削許可を受け、掘削を行っていたところ、同年9月に地中900mから自噴量毎分1630リットル、温泉温度51度の温泉を掘り当てた。
 原告は、被告による上記掘削により原告の温泉の湯量の減少および泉温の低下が生じた(平成20年11月には湧出停止)として、営業権の侵害および温泉専用権に基づく妨害排除請求として上記掘削源泉からの温泉湧出の差し止めを求めたものである。ちなみに、原告が主張する湧出量等の測定結果(湧出量・泉温)は次のとおり。
 昭和31年7月17日  毎分38.82リットル 40.4度
 昭和62年10月20日  毎分34.6リットル 41.3度
 平成17年3月3日  毎分33.3リットル 40.0度
 平成17年10月21日  毎分26.9リットル 39.5度
 平成17年11月2日  毎分20.0リットル 38.0度
 平成18年1月31日  毎分15.1リットル 33.4度

【判 旨】
 裁判所は、原告温泉の検証を行った結果も踏まえ、次にように判示して、請求の前提となる事実が認められず、また、今後も温泉の湧出量の減少等が生じる蓋然性を認められないとして、原告の請求を棄却しました(原告敗訴)。
 すなわち、被告による掘削が行われた平成17年9月の直後である原告の温泉の測定結果は、本件掘削以前と比べ、特に湧出量において顕著に低い数値を示しているものの、原告が示す「測定結果は、原告旅館の浴槽の吐出口において湯量等を計測したものにすぎず、各々の計測時に、源泉湧出口から浴槽吐出口に至る引湯管に破損や閉塞など、湧出量の正確な測定の支障となる事情が存在しなかったことなどを認めるに足りる証拠もないから、これをもって原告の温泉の湧出量が減少したものと直ちに認めることはでき」ず、また、原告は湧出自体が停止したとまで主張したが、「平成23年6月1日に検証を実施した際、原告の源泉湧出口から毎分36.4リットルの割合で泉温38.8度の温泉が湧出していることが認められたのであって、湧出が停止していないばかりか」、原告主張の「測定結果と比較しても、本件掘削後明らかに原告の温泉の湧出量が減少し、かつ、泉温が低下したと認めることは困難である」、と。

【紹 介】
1.裁判所のウエッブサイトでは、どこの温泉かは明記していません。しかし、ヒントになる部分は掲載されいますし、これらを手掛かりにインターネットでちょっと調べるとどこの温泉で、当事者は誰か分かってしまいます。今回は裁判所が仮名としていますので、それに合わせています。

2.本件では法律論に入らずに判断されています。、「湯量は減ってないじゃん」、「温度も下がってないじゃん」、「減ってたときは別の理由があったんじゃないの」で済まされてしまっているようです。原告が不正競争防止法を持ち出したことにも疑問なしとはしませんが、温泉権に基づく妨害排除・妨害予防については、新たな掘削や動力用水によって既存の温泉の湧出量が減少するなどした場合には、権利濫用が認められるときや専ら他人の権利を侵害する目的でなされたときに限り、差止が認められているようです(安藤雅樹「温泉と法に関する考察」信大法学17号(2011年)291頁参照。機関リポジトリ:https://soar-ir.shinshu-u.ac.jp/dspace/bitstream/10091/13253/1/shinshu_law_review17-05.pdf)。もう少し争いようはあったのでしょうが、原告側にもいろいろ事情があったのでしょう。

3.原告・被告とも営業しているので、その点は何よりです。

Posted on 2015/11/10 Tue. 19:43 [edit]

CM: 0
TB: --

top △

甲府のノラ-猫編20号 

狭苦しいところですが、どうぞ遠慮なくニャー。

ノラ20号

Posted on 2015/11/07 Sat. 16:49 [edit]

CM: 0
TB: --

top △

甲府地裁平成民事裁判例の紹介(4)-平成20年10月10日判決 

今年も2か月足らずになってしまいました。
山梨大学でも今月あたりから入試の準備が本格化してきます。

今朝の研究室の窓からの南アルプスはコチラ↓ 紅葉が始まっています。
20151104風景

研究室の庵主はこの週末は、中四国地域の法学・政治学の研究者が主要メンバーの学会に参加するため、岡山大学まで出かけてきました。
いくつか研究報告を聴講したのですが、広島大学の宮永文雄教授の報告「所有者不明の土地の時効取得者による国に対する所有権確認訴訟」の中に、このシリーズに関連する甲府地裁の裁判例≪甲府地裁平成20年10月10日判決(所有権確認請求事件)登記情報602号133頁≫が出てきました。報告は民事訴訟法の観点からのものであり、庵主の専門外なのですが、忘れないうちに紹介しておきたいと思います。

【事案の概要】
原告(X寺)は、山梨県甲斐市所在の本件土地につき、X寺が宗教法人として法人格を取得した昭和30年から20年間占有しているとして、所有者であるとする国(Y)に対し、時効取得による所有権の確認を求めた。ただし、本件土地は、不動産登記簿上表示登記として、地目「墳墓地」、地籍「165平方メートル」と記載されているものの、所有者欄には記載がなかった(甲府地方法務局に保管の旧土地台帳も同様の記載)。
X寺の主張に対し、Yは、この訴えは被告適格(被告となる資格)ひいては確認の利益を欠く不適法なものであると本案前の主張をした。すなわち、本件土地は明治7年に一旦官有地とされたものの、その後民有地に編入されており、仮に不動産登記簿に所有者が表示されていなくても、直ちに無主物とされ、国庫に帰属するものではないこと、本件土地について現に紛争が生じているわけではないことから、X寺とYとの間で所有権の確認をしたとしても、原告の権利または法律的地位の危険・不安は除去されるものではない、と。

【判 旨】
請求認容。
本件土地の所有権については、江戸時代末期以来X寺が占有しており、現実の支配関係があったものと認定できるものの、だからといってX寺に所有権があったということはできない。そして、「証拠拠上、本件土地の本来の所有者を明らかにし得る証拠は何ら存在しないのであるから、不動産登記簿上所有者の記載のない本件土地は、これを無主の不動産として国庫の所有に帰したものと解せざるを得ない」とし、Yに所有権があるとした(Yを被告とする所有権確認の訴えの利益を認めた)。
X寺の所得時効の成立要件についても、「原告は、昭和30年5月26日に法人格を取得した以降、昭和45年ころまで檀家が本件土地に入り、原告が使う一年分の薪を切り取り、土地を整備し、その後は2年に1度くらい原告の檀家が本件土地に入り、雑木の伐採、竹木の間引き、雑草取りの作業を行っており、これに対し誰からも異議の出た事実が存」せず、また、「薪を切り取る必要がなくなった昭和45年以降、本件土地にはあまり人が立ち入らず、荒れた状態となり、同時に原告による本件土地の管理の程度も密ではなくなったことが認められるのであるが、それでも、原告が昭和45年以前の管理を継続し、少なくとも2年に1度程度本件土地の管理行為を行い、これについて第三者が異議を述べることもなく、第三者が本件土地の管理占有行為をなしたといった事実を認めることもできない」と認定し、X寺の本件土地に対する客観的に明確な程度に排他的な支配状態が続いており、要件を満たしている。

【紹 介】
1.土地にはそれぞれ1筆ごとに登記情報(不動産登記法改正前は登記簿)が備えられており、その登記情報に所有者の情報が記載されています。この記載の意味は、所有権を有する者が自らの所有権を第三者に主張することができるという点(対抗要件といいます)にあります。本件と同様に、何らかの事情で、所有者欄に記載がないものも存在しています。
 このような場合に、登記上所有者をX寺とするためには、所有権の確認判決によるしか実際のところ方法がありません。その確認判決をとるための相手方(被告)として、国が適切かが問題となったわけです。甲府地裁では、民法239条2項(所有者のない不動産は、国庫に帰属する。)が適用されるものとして、Yが所有者であるとの原告X寺の主張が認められたのですが、控訴審(東京高裁平成21年10月14日・登記情報602号129頁)、上告審(最高裁平成23年6月3日・集民237号9頁)では、Yの所有権を否定し、いずれも確認の利益がないとして、原告が敗訴しています。

2.明治初年の土地の変遷について、高裁の認定が詳しいので、そのまま引用しておきましょう(証拠部分省略)。
「第3 当裁判所の判断
 1 確認の利益について
(1) 証拠(証拠は認定事実に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア・イ <略>
ウ 江戸時代においては、所有権の権利概念がなく、官有地と民有地の区別もなかった。明治維新政府下となり、明治4年正月5日太政官布告第4号(社寺上知令)は、各藩が版籍奉還したにもかかわらず社寺のみが土地と人民を私有するのは不相当だからこれを召し上げるものとし、社寺財産は、社寺所有の現境内地以外のほかはすべて官有地とされた明治6年3月25日太政官布告第114号「地所名称区別」が定められ、土地は、神地、官有地、公有地、私有地あるいは除税地に分類された。
 次いで、明治7年11月7日太政官布告第120号「改定地所名称区別」により、官有地と民有地の種別を具体的に示し、官有地を第一種ないし第四種に、民有地を第一種ないし第三種に区分し、民有地についてはすべて所有権の帰属を証する地券状が発行されることになった。墳墓地(同年4月20日の「墓地処分内規則」で、墳墓とは「死人ヲ埋メ石等ヲ以テ其地ニ標識スル」ものであることが規定された。)についても、官有地あるいは民有地のいずれかに区分され、無税の方針が打ち出された。民有地でない墳墓地は官有地第三種として地券を発行せず、民有地に属する墳墓地については、民有地第三種として地券が発行されることになった。
エ 明治8年7月8日地租改正事務局議定「地所処分仮規則」により「従前官有地ニ設クル墳墓の地区域ヲナシタル地ハ今度更ニ民有地第三種ト定メ人民共有墓地トナスヘキコト」と定められ、墓地について統一した無税策が採用され、従前官有地に属した墳墓地は、官有地から民有地第三種(民有の共有墓地)に編入され、更に明治9年6月13日太政官布告第88号により、従前の民有地第三種が同第二種に改められた。
オ これら所有者等の状況を明らかにするために明治22年に地券制度から土地台帳制度に切り替わ」った。

3.このX寺は、甲斐市敷島にある「常説寺」だと思われますが、判例情報では公表されていないようなので、推測ということで留めておきたいと思います。

Posted on 2015/11/04 Wed. 17:33 [edit]

CM: 0
TB: --

top △

2015-11
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30