同性婚に関する台湾司法解釈 

研究室のある甲府は今日も真夏日の予報です。

久しぶりの南アルプスはコチラ↓ 久しぶりなのに霞んでいます。
20170530風景

さて、先週末5月24日に、台湾の司法院大法官会議から、同性婚に対する注目すべき司法解釈748号が公表されました。たまたま、1年生の演習でLGBT問題を調べてもらっているので、研究室の庵主もこの週末原文を読んでいました。今回は折角読んだこともあり、少し紹介しておきたいと思います。

原文のURLはコチラ↓ 英文のプレスリリースもついています。
http://jirs.judicial.gov.tw/GNNWS/NNWSS002.asp?id=267570&flag=1®i=1&key=&MuchInfo=&courtid=

司法院大法官会議が示した司法解釈は以下のとおりです(拙訳御免)。
1.中華民国民法の婚姻規定は、同性カップルが共同生活を営むために親密性かつ排他性を有する、永続的な結合関係を形成できる範囲で、中華民国憲法22条の婚姻の自由と同7条の法の下の平等に違反している。
2.関係機関は、本解釈公布の日から2年以内に、本解釈に従い関連法規の修正あるいは制定をおこなうべきである。
3.いかなる形式で婚姻の自由と法の下の平等を達成するかは、立法形成の問題である。
4.関連法規の改正等が間に合わないときは、同性カップルは永続的な結合関係を成立させるため、現行の婚姻規定により、2名以上の証人の署名のある書面をもって、戸籍機関に結婚登録をすることができる。


この解釈とその理由づけについては、家族法や台湾法、あるいはLGBTに関する専門家(たとえば、鈴木賢明治大学教授などが有名)から適切なコメントが出されているようなので-まだ見ていません-、庵主は興味を持った点だけを書いておきたいと思います。

大法官会議は、婚姻制度が子孫を残すことへの保証制度と考えることについて、根拠のないものとしています。すなわち、婚姻規定は、生殖能力を婚姻の要件としておらず、婚姻後に子供ができないことをその無効や離婚の要件としていないことから、子孫を残すことが婚姻の不可欠の要素ではないと言い切りました。

これまでの「婚姻」「結婚」という語感からは、違和感を持つ人たちがいるかもしれません。その点では新たな制度か名称をあたえるべきなのかもしれません。

説示の後先は逆なのですが、大法官会議は、次のようにも述べています。すなわち、同性カップルの永続的な結合関係を成立させることは、異性カップルに適用される現行の婚姻規定の効力に影響を与えないし、また異性カップルによって構成されてきた社会秩序を改変するものではない、と。

この点、説明のために、日本民法における婚姻の効力を見てみましょう。日本民法では、①夫婦同氏(民法750条、751条)、②同居・協力・扶助義務(民法752条)、③成年擬制(民法753条)、④夫婦間契約取消権(民法754条)、⑤貞操義務、⑥相続権(民法890条)、⑦婚姻費用の分担(民法760条)、⑧日常家事債務の連帯(民法761条)や⑨嫡出推定(民法772条)などがあげられます。この中で同性カップルとして不都合が生じるおそれがあるのは、子が絡む嫡出推定のみです。

具体的には、第三者の精子によって懐胎した女性とそのパートナーがいた場合、このパートナーと子との関係をどのように規律するかの問題が生じます。ただし、この点はパートナーが男性であったとき(異性婚)でも、生殖補助医療の問題として議論が必要なので、同性婚を否定する理由にはなりません。

台湾の今回の司法解釈は、アジア初とのことです(25日付け日経新聞朝刊社会面)。今後どのようになるのでしょうか。門外漢ながら注目してゆきたいと思います。

最後に本件司法解釈によると、30年間にわたり権利を主張してきた祁家威さんに対し、敬意と祝意をささげるため、写真を掲載しておきたいと思います。
家威    zh.wikipediaより
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Posted on 2017/05/30 Tue. 11:17 [edit]

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「企業活動と人権」に関する思いつき 

またまた長らく更新できませんでした。
今年から授業内容を組み替えたことや少し毛色の変わった非常勤講義を持ったことから、授業準備が自転車操業状態だったことが原因です。今週でだいたいの講義が終わり、更新の仕方を忘れないように、簡単に記事で更新しておきたいとおもいます。

久しぶりの南アルプスの風景はコチラ↓ この季節あまりスッキリ見えることは少ないです。
風景20160729

以前このブログにも書いたと記憶していますが、
同僚の教員は着任前の庵主について、企業出身者ということで
お金儲けのためには犯罪行為だってへっちゃらだよ、とか戦争だってやっちゃうよ
という考え方の人ではないかと妄想していたそうです。

そういうこともあって、たまたま1コマ余裕のできた非常勤先の講義で、 「ビジネスと人権」 について、話をすることにしました。

庵主が前職で管理職になったころ、関西本社の会社であったこともあり部落差別 の問題について研修がありました。また、勤務中には、男女差別や各種ハラスメント も話題になることが少なくありませんでした。

もっぱら日本国内における企業と人権の問題も重要なのですが、その一方1990年代から多国籍企業による発展途上国における人権侵害とビジネス活動との問題がクローズアップしてきました。グローバル化の影の部分ですね。
すなわち、代表例として、先進国の企業は、より安い労働力を求めて発展途上国に生産拠点を移し、その生産拠点となった取引先であるいはそのまた取引先(サプライチェーン)において、児童労働奴隷的労働劣悪な労働環境などの労働上の問題、環境破壊などの環境問題などが生じているという問題です。

企業に身をおいた経験としては、確かに、
人権はお金儲けにつながらない(逆にコストがかかる)
取引先やその先の問題なので関知できないし、干渉すべきではない

といって、人権問題の発生をなかったことにしたいという誘惑にかられる企業人が少ないと推測します。

しかし、人権問題があるような企業またはその企業の商品に対しては、国際的な不買運動や訴訟提起が行われるようになっているだけでなく、持続可能な企業活動とはいえないとして、企業としても国内だけでなく、国際的な人権問題から目を背けられなくなっています。

国際的な人権問題について、ここでいう人権とは何でしょうか?
2011年に国連人権委員会に報告された「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合「保護、尊重及び救済」枠組実施のために」(邦文訳は国際連合人権センターに掲載→ http://www.unic.or.jp/texts_audiovisual/resolutions_reports/hr_council/ga_regular_session/3404/ )によると、最低限として、国際人権章典(世界人権宣言、国際人権規約など)と国際労働機関宣言であげられた基本的権利に関する原則とされています。

したがって、昨今話題の「日本固有の伝統に基づいた人権観」とは異なる可能性大です。
人種、国籍、宗教にかかわらず、普遍的と国際的に考えられている人権が想定されています。

また、先ほどの人権員会報告の中に企業の責任に関して次のような原則があります。
企業は人権を尊重すべきである。 これは、企業が他社の人権を侵害することを回避し、関与する人権への負の影響に対処すべきことを意味する。」(付録一般原則11)
この原則の解説には、「企業は、司法手続の不偏不党性を弱めかねない行為などによって、国家が人権義務を果たす力をむしばむべきではない。」とされています。たとえば、自分たちの事業を裁判所の審査の対象外とし、司法上の規制を受けないようにすることを働きかけるなどの行動は、重大な懸念があるといえるでしょう。

上記以外にもいろいろ気づく点があるのですが、またの機会に・・・・

Posted on 2016/07/29 Fri. 14:12 [edit]

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民法(債権関係)改正案における個人保証人保護の拡充 

庵主の研究室のある山梨大学でも明日から講義がはじまります。
今日は、講義の準備と週末に大阪で行う研究会報告の準備のために登校しています。

今朝の研究室からの南アルプスの様子はコチラ↓ 雪が少なくなっています。
20160411風景

研究会報告では、昨年3月に国会に提出され、現在も継続審議中の民法(債権関係)改正法案における保証に関する規律と実務上の対応をとりあげる予定です。銀行からお金を借りるとき、家を借りるときなどに保証人を立てるなど、日常生活でもしばしば接することになる法律制度であり、今回の改正でも重要な点が含まれるため、研究会で取り上げる次第です。

以前市民向けの別の機会にも、個人保証人保護の拡充ということで話をさせてもらう機会もあり、普通の社会人でも関係するような場合をとりあげて考えてみたいと思います。

まず、個人が保証人となる場合の規律の全体像を整理するとつぎのようになります。
┏ 普通保証
┃ ┣ 被保証債務が事業のために負担する債務以外 【ケース①】
┃ ┗ 被保証債務が事業のために負担する債務
┃    ┣ 事業のために負担した貸金等債務が含まれない
┃    ┗ 事業のために負担した貸金等債務が含まれる 
┃       ┣経営者保証 
┃       ┗経営者保証以外(いわゆる第三者保証)
┗ 根保証
   ┣ 被保証債務に事業のために負担とする債務が含まれない
   ┃ ┣ 貸金等債務が含まれない【ケース②】
   ┃ ┗ 貸金等債務が含まれる  
   ┗ 被保証債務に事業のために負担する債務が含まれる
     ┣ 貸金等債務が含まれない
     ┣ 貸金等債務は含まれるが、事業のために負担する貸金等債務が含まれない
     ┗ 事業のために貸金等債務が含まれる
       ┣ 経営者保証【ケース③】
       ┗ 経営者保証以外(いわゆる第三者保証)【ケース④】

複雑ですね。
まず、用語の解説です。「普通保証」と「根保証(ねほしょう)」ですが、前者は単発の借り入れや商品購入代金の支払いを保証するような場合をいい、後者は一定の範囲に属する不特定の債務(たとえば、毎月購入する商品代金を担保する、事業資金を毎月必要額借り入れるなど。クレジットカードもそうですね)の支払いを保証する場合をいいます。

具体的な例で考えてみましょう。息子が借り入れた居住用住宅ローンの保証はケース①に該当し、今回の民法改正案による変更はありません。これに対して、息子がアパートを借りた場合にする家賃等の保証はケース②に該当し、改正法案では保証の限度額(極度額といいます)を書面で決めないと保証そのものが無効となります(改正法案465条の2)。

よほどの大企業でもない限り、会社の経営者は会社の銀行借入れ(貸金等)や仕入れ代金について保証することがあります。このような場合はケース③に該当します。
ケース③では、上記の極度額を定めるほか、確定期日といって保証対象となる債務の発生時期が最長5年に制限されます。これらの点は現行法でも同様です。これらに加え、保証人になってくれと依頼する者・会社(主たる債務者=主債務者といいます)は、その財産状況・収支の状況、被保証債務以外の債務の状況などに関する情報を依頼を受けた者に提供しなければなりません。この情報提供がなかったり、あるいは事実と異なる情報を提供されたことにより、誤認が生じた場合は、保証を取り消すことができると明記されました(改正法案法案465条の10)。
問題は改正法案における「経営者」とは誰かになります。この点、会社の取締役過半数の株式を有する大株主、共同事業を行う者、それにこのような会社が行う事業に現に従事している配偶者とされています(改正法案465条の9参照)。

知人の保証人になって巨額の負債を負ってしまい、家族の人生が無茶苦茶になった的な話は、どうでしょうか。
このような事態はケース④で生じます。すなわち、事業資金の銀行借り入れなど巨額になりがちな事業上の債務について、友誼心などから保証をしてしまった場合です。
ケース④では、ケース③と同様の規律のほか、保証人になろうとする者が保証人になる段階(1か月以内)に法律の専門家である公証人に対し、保証の内容や保証人として責任を負う意思を口述して、公正証書という書類を作成しないと、保証は有効に成立しないと定めました(改正法案465条の7)。

上記のように巨額の負債になり、保証人が過重な負担を負うおそれがあるような保証の場合、入り口で保証人が再度考慮することができる機会を挟ませたわけですね。
銀行をはじめ、債権者側としては業務コストは上がるでしょうが、やむを得ないものとして対応してゆくこととなるでしょう。

Posted on 2016/04/11 Mon. 15:02 [edit]

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歴史学から学ぶ-大藤修『日本人の姓・苗字・名前』 

またまた長らく更新を怠っている間に、お盆休みも無事に過ぎました。
今日の研究室の庵主は入試関係の校務をするために、朝から大学に登校しています。

今日の研究室の窓からの南アルプスはコチラ↓ 山の様子から見ると2000m以上は雲の中です。
20150819風景

さて、このお盆期間中、歴史学者の大藤修先生(東北大学名誉教授)の『日本人の姓・苗字・名前』歴史文化ライブラリー353(吉川弘文堂、2012年)という本を読んでいました。目的は、ゼミの学生が「選択的夫婦別姓」の報告をするとのことだったので、それに先立ってもう一度「姓」、「苗字」、「氏」などの歴史的な意義を確認するためでした。

大藤先生の本の表紙はコチラ↓ 
日本人の姓

大藤先生の本で得た知識をひとつ(民法を専門と言っているくせに、知りませんでした・・・。家族法は専門外と言い訳します。)。

● 太政官は、明治8年(1875年)の「平民苗字必称令」に関連して、石川県からの伺いを受けた内務省からの問い合わせに対し、翌年3月、婦人は他家に嫁いでも「所生の氏」を称し、夫の家を相続した場合に限って、「夫家の氏」を称すべきであるとの指令を行った。夫婦別氏の指令
● この指令に関しては、諸府県から異議申し立てが相次いでなされた。その理由は、民間にあっては、妻が生家の氏を称する例はわずかで、婚家の氏を称するのが一般の慣行であるとする。
● 明治11年の民法草案では「夫婦同姓」と、また、明治21年の第一草案では「夫婦同氏」とする規定となっていた。

そして、その後旧民法(「家族同氏」)の制定議論を経て、現行民法の夫婦同氏(民法750条、戸籍法16条、同74条)となっています。明治初年の夫婦別氏は平民(それまで公的には氏を名乗れなかった人たち)の問題であり、妻の出自が重要であった支配階級の伝統を重視する政府では、旧民法の議論に至るまで、夫婦別氏的な立場だったそうです。

民法研究のうち解釈論(既存の条文を解釈し、具体的な問題の解決につなげる議論)ではもちろん、立法論(ある社会的問題を解決するためどのような法を定めるのかの議論)でも、歴史的な事実は重視されるべきものだと庵主は考えてきました。

ところが、大藤先生は夫婦別氏(別姓)をめぐる現在の議論について歴史学の立場から警鐘を鳴らしていました。少し長くなりますが、上記書籍のその部分(220頁)を引用しましょう。

 「夫婦別氏」反対論には、それを認めると家族の絆が弱まり、伝統的な「家族」の制度が崩壊する、というものが多い。しかし、その場合に想定している「家族」制度なるものは、先述したように、明治になった「家」制度と同義のものとして創出されたにすぎず、決して古くからの伝統ではない。「夫婦同氏」にしても、それが日本で初めて法制化されたのは、明治三一年(一八九八)公布・施行の明治民法においてであり、それ以前には政府も、夫の家に入った女性は「所生の氏」を称することを原則としていた。前近代においてお「夫婦別姓・別苗字」の事例はみられるが、それとて妻の人格を尊重してのことではなく、歴史的に固有の意味をもっていた。
 夫婦同氏、夫婦別氏のどちらを主張するにせよ、その正当化の根拠を安易に歴史に求めるのではなく、氏をめぐる問題は、どのような形にしたら、日本国憲法にうたう「個人の尊厳と両性の本質的平等」を実現できるか、という憲法の原則に立って議論すべきであろう。


法学の研究者・教育者として、改めて考えてみたいと思います。

Posted on 2015/08/19 Wed. 17:04 [edit]

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NBP試合観戦契約約款について(後編)  

今日から8月です。
先月は、本務校の校務や期末試験の実施、非常勤先の期末試験などが立て込んで、結局1回しかブログの更新ができませんでした。今日の午後に、非常勤先に成績を送信したので、やっと無事にお盆休みを迎えることができます。

研究室の窓からの南アルプスはコチラと思いましたが。。。↓ 霞んで見えません。
20150801風景

いろいろと連載物もあったのですが、長らく更新していないうちに忘れてしまいそうです。
そこで、覚えているものとして「NBP試合観戦契約約款」について、後編を書きたいと思います。

大学で契約している判例検索システムD1-Lawで、この約款がらみの事件を検索してみると、2つ事件がヒットしました。
1)この約款に基づき入場券の販売拒否対象者として指定された者が指定の効力を争った事案  
  (第1審)名古屋地裁平成22・1・28判決  (控訴審)名古屋高裁平成23・2・17判決
2)プロ野球観戦中にファールボールが当たり、後遺障害が残ったとして球団等に損害賠償を求めた事案
  (第1審)札幌地裁平成27・3・26判決

このうち札幌地裁の事件を紹介しましょう。

原告の女性は、平成22年8月に札幌ドームで開催された北海道日本ハムファイターズ(被告ファイターズ)対埼玉西武ライオンズの試合を子供とともに観戦に訪れ、内野指定席に座って観戦していところ、3回裏の被告ファイターズの攻撃中に飛んできたファールボールを顔面に受け、その結果失明するに至ったので、被告ファイターズらに対し損害賠償を求めたものです。

争点はいろいろとあるのですが、約款関連では、①主催者である被告ファイターズに野球観戦契約上の安全配慮義務違反があるか②被告ファイターズに約款13条の免責規定が適用されるかでした。

札幌地裁は争点①については、被告ファイターズと札幌ドームの指定管理者である相被告札幌ドームの工作物責任(民法717条)上の設置・管理の瑕疵が認定されており、その意味で安全配慮義務があるとしています。

争点②に関しては、約款上の免責条項をまず引用しておきましょう。

第13条 (責任の制限)
 主催者及び球場管理者は、観客が被った以下の損害の賠償について責任を負わないものとする。但し、主催者若しくは主催者の職員等又は球場管理者の責めに帰すべき事由による場合はこの限りでない。
(1) ホームラン・ボール、ファール・ボール、その他試合、ファンサービス行為又は練習行為に起因する損害
(2) 暴動、騒乱等の他の観客の行為に起因する損害
(3) 球場施設に起因する損害
(4) 本約款その他主催者の定める規則又は主催者の職員等の指示に反した観客の行為に起因する損害
(5) 第6条の入場拒否又は第10条の退場措置に起因する損害
(6) 前各号に定めるほか、試合観戦に際して、球場及びその管理区域内で発生した損害
2  前項但書の場合において、主催者又は球場管理者が負担する損害賠償の範囲は、治療費等の直接損害に限定されるものとし、逸失利益その他の間接損害及び特別損害は含まれないものとする。但し、主催者若しくは主催者の職員等又は球場管理者の故意行為又は重過失行為に起因する損害についてはこの限りでない。
3  観客は、練習中のボール、ホームラン・ボール、ファール・ボール、ファンサービスのために投げ入れられたボール等の行方を常に注視し、自らが損害を被ることのないよう十分注意を払わなければならない 。


約款によるとプロ野球観戦から生じる観客の損害は原則として主催者(球団)は責任を負わない旨を定めており、賠償責任を負う例外(1項各号)と例外に該当した場合に負うべき賠償の範囲(2項)を定めています。

被告ファイターズ側はこの条項の適用を主張したのですが、札幌地裁は同条1項但書に「主催者又は球場管理者の責めに帰すべき事由による場合はこの限りでない」と定めているところ、原告の損害は札幌ドームの「設置及び管理に瑕疵が存在したことが原因であると認められるから、被告ファイターズは、原告に対する損害賠償責任を免れることはできない(また、以上によれば、被告ファイターズは、原告に対し、野球観戦契約上の安全配慮義務違反があったものと認められる。)」としました。

また、札幌地裁は、損害賠償の範囲を治療費等の直接損害に限定する約款13条2項本文につき、「ファウルボールに限らず、一般的に主催者や球場管理者の損害賠償責任の相当部分を免除するというもので、信義に反するものであり、観戦者の利益を一方的に害するものであるから、それ自体無効というべきである」としました。さらに、札幌地裁は、札幌ドームには工作物責任が認められる一方、責められるべき落ち度のない原告がその瑕疵によって身体に重大な後遺障害を負ったのであるから、被告ファイターズが同項の適用を主張して賠償額を限定することは、権利の濫用に当たると指摘しました。

札幌地裁の判決では、工作物責任による工作物の設置・管理上の瑕疵を認定するに当たり、プロ野球の特質(事故の危険性、観客の属性など)を検討し、札幌ドームでの瑕疵を認定したものです。最近の球場では、臨場感を求めよりプレイヤーやボールに近い座席を増設したりする動きがありました。これらの座席の安全対策について、本件は参考となる事例となります。

また、約款13条2項の制限については、一般的に無効とも解することができるような判示となっています
この点については、被告ファイターズだけでなく、統一約款を進めてきたNBL側としては受け入れがたいと負われます。ということで、被告ファイターズは、4月7日に札幌地裁に控訴しています

Posted on 2015/08/01 Sat. 18:15 [edit]

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