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山梨の護良親王伝承_旧秋山村の伝承と旧盛里村の伝承(その1)  

研究室のある大学にもそろそろ学生さんが戻り始めています。
本格的には来週からです。

今朝の南アルプスの様子↓ そろそろ秋めいてくるかな
20230926風景

さて、雛鶴神社、石船神社と来たところで、そろそろ伝承に触れていきたいと思います。
まず、最初に歴史的に事実と考えられているのは、護良親王が鎌倉に幽閉され、中先代の乱の混乱に乗じて、弑されたということだけです。また、護良親王の墓所は、『太平記』により葬礼をしたと言われる鎌倉の理智光寺(鎌倉市二階堂)の跡が宮内庁により陵墓指定されています。

これに対し、旧秋山村と旧盛里村の伝承では、護良親王の首級は鎌倉で弔われることなく、雛鶴姫によって西に運ばれることになります。
伝承なので、さまざまな派生があるのですが、その骨子は、雛鶴姫は旧秋山村までやってきて、護良親王の子を産むが産後の肥立ちが悪く、亡くなってしまい、祀られるようになるというものです。

昭和48年に東京女子大学史学科民俗調査団が旧秋山村で採集した話を一つ引用しておきます。なお、これは同調査団調査報告書「甲州秋山の民俗:山梨県南都留郡秋山村寺下・尾崎」にまとめられており、国会図書館デジタルアーカイブ個人送信でも読むことができます。

「雛鶴姫の伝説」
大塔の宮護良親王が、鎌倉で暗殺された時、奥方であった雛鶴姫は、大塔の宮の首を持って従者と共に鎌倉街道を落ちのびて来て、秋山に来た。そして一古沢のイチバンタケで一晩泊り、古福志で数泊し、神野の上ノ原で休み、オバガミまで来て産気づき、お産をした。しかし肥立ちが悪く、すぐに子どもと共に死んだ。そのお産をした所には、お産の時に使う屏風のような形をした屏風岩と呼ばれるものがある。また、子どもを取り上げた船の様な形の石もある。そして、秋山川のそこから下には、お産の時に血で赤く染まったという赤い石があるが、そこより上にはない。雛鶴姫の亡くなった所は、無生野というところであるが、そこの人々は、雛鶴姫の死体を朝日(盛里村朝日)へ持って行って、捨てた為、情けがないということで、無情野と呼ばれ、それが転じて無生野となった。それで、朝日には雛鶴神社がある。          (尾崎。明治35年生まれSA女話)


上記は、旧秋山村尾崎の女性から採集されたものですが、同報告書には無生野の男性から採集した以下のような話も載せられています。

「無生野における雛鶴姫の伝説」
大塔宮護良親王が暗殺された後、雛鶴姫は、その首級を持って落ちのびて来て、現在雛鶴峠と呼ばれている所でお産をした。それは、師走二十九日の事で、寒風にさらされて、子供を産み落すと同時に、共に他界してしまった。その後、雛鶴姫の従者たちが住みついてこの土地が始まった。雛鶴姫の死後、子供である陸長親王が、吉野賀名生の戦いに敗れ、この地へ来た。そして、大塔宮と雛鶴姫が共に亡くなったことを聞き、この地に住みつき、供養をした。~<中略>~ また無生野という地名の由来は、「何も生えない地」という様な意味で、無情ということではない。そして、雛鶴姫の死体を朝日に捨てたということも事実ではない。   (無生野。FH男)



<つづく>

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Posted on 2023/09/26 Tue. 16:27 [edit]

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甲府ねこ-通番50号(重複御免) 

食物繊維もとらないとニャー

ノラ50号

Posted on 2023/09/15 Fri. 09:32 [edit]

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山梨の護良親王伝承_石船神社(その5)  

なかなか残暑が厳しいですね。
研究室のある甲府も冷房を適宜使わないとしんどいです。

今朝の南アルプスの様子↓ 台風13号の影響か雲がかかっています。
20230906風景

さて、石船神社のその5になります(最終回)。
護良親王の首級と伝わる復顔頭骨は明治時代半ばにその存在が明らかになりましたが、以前にも述べたように、昭和50年代に、調査が入っています。きっと調査報告書があると思うのですが、見つけていません。そこで、『都留市史 3 民家・民俗』618頁に史料としてあげられている、鈴木尚(東京大学名誉教授・成城大学教授)「石船神社に伝わるご首級について」の一部を引用してみましょう。なお、全文は国会図書館の個人送信でも読むことができます。

1.頭首は、黒漆と粘土を練り合わせ、復元したもので、表面には金箔を貼り、首のつけ根は朱漆によって赤く着色され、いかにも斬首された首のようにつくられている。
2.<略>
3.復元の技術は能面のそれと全く同じであり、能面師の手によって復元されたものと思われる。僅かに開く口、両頬の半月形をした浅い笑くぼ、まさに典型的である。
4.歯の全面に漆がかけられ、人為的に能面の歯の状態に作りかえられている。
5.以上の能面製作技術による頭部全体の復元は、今日まで類例がない。
6.<略>
7.露出した頭頂骨の頭頂孔(学名)には、木の根が入り込み抜けない。この事実は、ご首級を一度土中に埋葬し、骨になった時点で改葬し、首の上に漆を塗って、元の首級の状態に復元したものである。
8.このように漆で復元したことは、類例がないばかりでなく、丁重な処置であり、客観的にみて特殊な、あるいは高貴な方の首級と考えても、少しも不思議ではない。
<以下略>


首級に種字が記されていることも有名ですが、都留市史の記述では、光明真言の断片のごときであるとされており、真言立川流との関係も示唆されています。

この首級が現在の石船神社に収められたのは、文禄2年(1593年)とする説が有力であり、それまでは大旅川対岸の高根山中腹の頂の小祠に埋められていたとされています。

旧小祠のあった方角の様子↓ 探索する時間がなく、実際の場所はよくわかりません。
石船神社旧社地方面

Posted on 2023/09/06 Wed. 12:47 [edit]

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山梨の護良親王伝承_石船神社(その4)  

新型コロナ第9波に至り、コロナに感染してしまいました(現在は陰性化)。
どうも公共交通機関利用中に感染したようなので、みなさまも感染対策を万全に。

今朝の南アルプスの様子↓ お山は秋めいてきているのかしらん。
20230828風景

さて、石船神社の護良親王の首級の写真にまつわる障りです。
作家の加門七海さんが『 怪談徒然草 』(初版はメディアファクトリーダヴィンチ編集部から2002年に刊行。最新は2022年に角川ホラー文庫から改版版が出ている)の中で、作家の三津田信三さんを相手に「首にまつわる話」として語っています。

加門さんがアンソロジストの東雅夫さんにこの首級の話をしたところ、東さんが雑誌の取材で石船神社を訪れ、この首級の写真を撮り、焼き増したものを加門さんにあげたところから話は始まります。加門さんは、首の写真でもあり、一応綺麗な紙に包んで、高いところに置いていたそうです。すると、・・・(以下そのまま引用)

 その晩以来、夜な夜な写真の方から、歩いてくる足音が聞こえるようになっちゃって・・・・・・。
 男の人が歩いてくる足音。その部屋は畳なんですね。ミシッミシッて、かなり重い体重だなっていうのまでわかるんです。で、途中でフェイドアウトしてゆく。
 私の部屋は二間続きで、写真は隣の部屋に置いておいたんだけどさ。私の寝ている部屋に毎晩毎晩、近づいてる。昨日が三歩だったら、今日は四歩に増えているみたいな・・・・・・・走行距離が延びてます、って感じになって(笑)、こりゃ堪らんと。


そうして、加門さんは丁寧な手紙を添えてその写真を神社に送り、その後は平穏になったとの話でした。

<つづく>

Posted on 2023/08/28 Mon. 14:05 [edit]

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山梨の護良親王伝承_石船神社(その3)  

お盆の大学一斉休業も済み、昨日新幹線大混乱の中勤務地に戻ってきました。
みなさま台風は大丈夫だったでしょうか。

今朝の南アルプスの様子↓お盆を過ぎると急速に秋の空になりますね。
20230818風景

さて、都留市朝日馬場の石船神社のつづきです。
オカルト界隈では、石船神社はつとに知られており、それは同神社の護良親王とされる首級についてです。

まずは、都留市教育委員会が市指定有形文化財として神社に掲示しているものをあげておきましょう。これが一番簡単明瞭な説明と思われます。

石船神社の復顔首級
人の頭がい骨に箔(金や銀を非常にうすい板のようにしたもの)を押しつけ、梵字(古代インドの文字・仏教遺物に多く使われている)を墨書きし、その上に小さな木片や漆と木屑を混ぜたような塑形材で肉付けして、生きている人の頭部のように仕上げられている。両眼には玉眼(水晶などで造ったもの)が用いられていたが現在は左眼にのみ認められている。
この復顔技術は我が国でも最も古い時代に属するものとして高く評価されている。
なお、石船神社には、護良親王(一三〇八~一三五五)の御首級であるという伝えがあり、同神社の御神体として古くから地域の信仰を集めている。



詳しいことはさておき、実際どんなものか気になりますね。
さまざまな障りがあるとされているので、このページでは直接引用せず、掲載されている他のウエブサイトにリンクを貼っておきたいと思います。ご興味のある方はご覧ください。

都留市観光協会ウエブサイト↓
https://tsuru-kankou.com/ishibune-shrine/
都留市立図書館ウエブサイト↓
https://www.lib.city.tsuru.yamanashi.jp/contents/history/another/jinmei/sinno.htm

<つづく>

Posted on 2023/08/18 Fri. 11:19 [edit]

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山梨の護良親王伝承_石船神社(その2)  

いよいよ立秋を迎えて、少しづつ秋の空になってきています。
お盆前の業務は明日までです(お盆明けまで更新予定がありません)。

今朝の南アルプスの風景↓ ね、秋の空に変わりつつあるでしょ。
20230808風景

さて、都留市朝日馬場にある石船神社のつづきです。
この神社は、朝日馬場の集落の産土さんとして、古くから地域の信仰を集めていたようです。

既出の『甲斐国志』の巻之七十二(神社部第十七ノ下)には以下の項目が立っています。

石船明神 朝日馬場村 本村ノ産神ナリ社地六畝廿歩除地ナリ、例祭七月朔日神主同上
(注:前項目である朝日曽雌村の神明八幡相殿社に井倉村神主兼帯とあり)


慶応4年8月(翌月には明治改元)に甲府社寺御役所あて「慶応四年辰八月 都留郡中組 由緒書上帳」には、以下のような説明がなされています(山梨県立図書館『甲斐国社記・寺記』第1巻所収)。なお、この文書の差出人は年番取締り 紫村美濃という神職さんです。

石船大明神 同馬場村
礎 竪弐間半 横弐間
祭神 中筒男命
祭日 七月朔日
末社 五社
社地 竪五拾間 横二拾八間 除地
如何之儀ニ候哉村持ニ相成居候而御年貢米村方迄取廻候


ここでは、祭神が住吉三神の中筒男命とされています。船から連想したものなのでしょうか。

また、既出の『山梨県市郡村誌 都留編』の盛里村の神社の項目には、以下のような記述があります(原文は句点なし)。

石船社 社地、東西拾壱間壱尺貮寸、南北貮拾壱間壱尺貮寸、面積貮百三拾七坪、本村中央馬場組ニアリ、祭神仝上(注:前の項目は曽雌組の五社神社であり、祭神は未詳とされている)、祭日陰暦七月一日

ここでは、また祭神未詳となっています。

都留市文化財審議会『都留市社記』には神社の由緒について、『山梨県市郡村誌』と『甲斐国志』からの引用のほか、以下のように書かれています。

祭神 表筒男命
   中筒男命
   底筒男命
・・・・・・・
由緒 延元二丁丑年(一三三七年)、高根山の頂の清池(ママ)をえらび祠を送って石船明神を祀った。此の地は眺めはよいが危険で不便のため、文禄三甲午年(一五九四年)七月一日現在地に社殿を造営した。
御神体は石の船で、宝物として刀があるという。
正徳三年(一七一三年)に鳥居を建立したが朝日川の洪水で流出した。



石船神社の様子↓ 
石船神社1

<つづく>

Posted on 2023/08/08 Tue. 12:43 [edit]

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どり~むすり~ぱ~でも 

いよいよ八月です。
庵主の担当する前期授業も昨日で終わりました。

今朝の南アルプスの様子↓ ここ数日朝にはすっきり見えます。
20230802風景

さて、先日、東京の所用先から関西の実家に帰省するのに、ドリームスリーパー東京・大阪奈良号という夜行高速バスに乗車しました。

こんなバス↓ 今回は関東バス株式会社の運航便
ドリームスリーパー1

この歳になると夜行高速バスは、よく眠れず、疲れが取れず、美容と健康に良くない!と思われるため、乗らないようにしてきたのですが、今回の日程の都合でやむをえずの選択になりました。
よく眠れず~を少しでも回避するために選んだのが、このドリームスリーパーです。

なんせ乗客11人、全室個室です。
こんなレイアウトです↓ 関東バスのウエブサイトより(https://www.kanto-bus.co.jp/nightway/dream-sleeper/)
ドリームスリーパー2

いろんな人がYouTubeにも乗車記をアップしていたりするので、設備等はそちらをご覧ください。

ところでで、乗り心地ですが(個人の感想)・・・
・個室なので、心理的にはかなり楽
・思ったよりも眠れたが、やはり足りず、翌日午後には睡魔と戦い、完敗
・座席も広いとはいえ、寝相があまり良くない庵主には寝つきがいまいち


運賃は「新幹線指定席代+安めのビジホ代」近くはするので、いつも利用するとはならないけど、乗るならこれくらい奮発しないと年齢的にはしんどいですね。

個室内で短い脚を伸ばした図
ドリームスリーパー3

Posted on 2023/08/02 Wed. 14:57 [edit]

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